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歩道橋
幹線道路に架かる歩道橋の欄干に頬杖をついて、くわえ煙草のまま煙を吐いた。
目を閉じると瞼の裏にオレンジ色に染まったビル群が焼きついて残った。
完全に行き詰まっている。
この1週間1行も書けていない。
感覚器官を一つ遮断すると、残された器官が研ぎ澄まされた。絶え間なく流れ出る排気音に混ざり、中央バスターミナルから聞こえる、長距離バスの発車を告げるアナウンスが重なる。
俺を知らない街へ運んでくれ。
目を開けると溜め息が漏れた。
はあ・・
瞬間、唇に紙フィルターの乾いた感触を残し、火が着いたままの煙草が道路に向かって落ちていく。 途中、大型トラックの風に煽られ、見失った。
腹立ち紛れに空き箱を握り潰し投げ捨てた。
「最後の1本だったのに。まったく、ついてない。」
赤色灯を回転させながらパトカーが停止した。
柔らかい音をさせて助手席のドアが開き、ごつい警官が出てくる。
辺りをキョロキョロ見渡している。歩道橋の上の存在に気づいたのか、ピタリと視線を合わせてきた。
目線を外さず明らかにこちらへ向かってくる。
階段を二段飛ばしでかけ上がってきた。
おい、なんだ。
俺に用か?
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