2人が本棚に入れています
本棚に追加
龍也、俺はお前を許さない。
「薬漬けの女一人・・」
あの雪の夜、お前はそう言って、凛子を冷めた目で見下ろした。
容疑者の身柄確保を優先したお前や警察組織。
凛子を生き地獄から救うはずだった俺達は、彼女を飛べない蝶にしただけだった。
佳子からの着信。
「真ちゃん、お姉ちゃんが。」
背後にくぐもったサイレンの音が聞こえる。
「凛子がどうした。早くターミナルにこい。」
「行けない。もう行けなくなったの。」
「何を言ってるんだ。早くこい。」
「お姉ちゃん、テレビ見て全部思い出したの。真ちゃんが出ていった後、私、とにかくお姉ちゃんの荷物を造ってた。気がついたら、お姉ちゃんがベランダに立ってて・・」
「立てたのか?凛子が?」
「そしたら、真ちゃんありがとう、って、手摺に飛び上がって、そのまま、そのまま・・」
「そんなの、嘘だ。最終話は、最終話はもう書いてあるんだ・・」
元暴力団組員殺人、死体遺棄事件の裁判は15年の実刑判決。
弁護人は量刑不当を理由に控訴を勧めたが、俺は申し立てをせず、一審で確定した。
服役後、満期出所まで3年を残し、今日仮釈放を迎えた。
塀の外に一歩出る。
改めて12年前を思い起こす。
最初のコメントを投稿しよう!