博多行き夜行バス

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龍也、俺はお前を許さない。 「薬漬けの女一人・・」 あの雪の夜、お前はそう言って、凛子を冷めた目で見下ろした。 容疑者の身柄確保を優先したお前や警察組織。 凛子を生き地獄から救うはずだった俺達は、彼女を飛べない蝶にしただけだった。 佳子からの着信。 「真ちゃん、お姉ちゃんが。」 背後にくぐもったサイレンの音が聞こえる。 「凛子がどうした。早くターミナルにこい。」 「行けない。もう行けなくなったの。」 「何を言ってるんだ。早くこい。」 「お姉ちゃん、テレビ見て全部思い出したの。真ちゃんが出ていった後、私、とにかくお姉ちゃんの荷物を造ってた。気がついたら、お姉ちゃんがベランダに立ってて・・」 「立てたのか?凛子が?」 「そしたら、真ちゃんありがとう、って、手摺に飛び上がって、そのまま、そのまま・・」 「そんなの、嘘だ。最終話は、最終話はもう書いてあるんだ・・」 元暴力団組員殺人、死体遺棄事件の裁判は15年の実刑判決。 弁護人は量刑不当を理由に控訴を勧めたが、俺は申し立てをせず、一審で確定した。 服役後、満期出所まで3年を残し、今日仮釈放を迎えた。 塀の外に一歩出る。 改めて12年前を思い起こす。
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