姉妹

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「おい、君、何言ってんだ」 強い口調で同僚警察官に咎められたが、俺はかまわず少女と目を合わせ、うなづいて見せた。 少女は丁寧なお辞儀を返したが、表情は固いままだった。 救命処置を終え彼女が出てきた。少女がストレッチャーの後ろを小走りで追って行く。 医師は 「激しいショックで意識が混濁しています。全身の打撲により、背中と腰に骨折がみられますが、適切なリハビリで歩行できるくらいには回復するでしょう。覚せい剤反応は陰性です。」 俺は生まれて初めて、神様とやらに感謝した。 数日後医師を訪ねると、当初の診断とは相違し、彼女は妹佳子との僅かな記憶を残し、その殆んどを失っていた。 そして、まるで、心と体が過去の記憶を取り戻すことを拒むかのように、彼女の下半身はピクリとも動かない、と言う。 それから数週間が過ぎたある日、交番にあのセーラー服の少女が訪ねて来た。 目が合うと少女ははにかんだ笑顔で 「私、佳子と言います。 姉を助けてくれてありがとうございました。 事情を聞きにいらしたお巡りさんに、あなたの交番を教えていただきました。 ここからは姉が働いていたお店のビルが見えるのですね。 姉もお巡りさんにお礼を言いたいと言っています。」
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