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そう言って持って来た手紙を差し出してきた。
「姉に会っていただけませんか。」
手紙はビルから転落した女を救う、正義の警察官に宛てられたものだった。
あの夜の礼と、今も入院してリハビリを続けていると書かれてあり、最後には、
あの夜のことは何も覚えていないので、出来れば会って、当日の様子を窺い、記憶を取り戻してお礼を言いたい
と書かれていた。
俺は今すぐにでも会いにいきたい思いに駆られたが、会うことで記憶を戻したら・・そう思うと躊躇した。
それでもなお、ストレッチャーに横たわっていた彼女の儚げな様子が眼に焼き付き、離れなかった。
警察官として生きていきたい、刑事になる夢を追いたい自分の気持ちを、来る日も来る日も、かき乱した。
よく晴れた2月の午後
病室の外から様子を見るだけだ
そう両者に折り合いをつけ、手紙に書かれていた病室を俺は訪ねた。
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