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でも本音は違った。
彼女と釣り合う男なんて……
僕には絶対不可能に思えた。
しかし、恋のチカラは絶大だった。
僕は、翌日、アルバイトをやめると、貯めていたお金をはたいて、大学入試の勉強を始めた。
僕はモーレツに勉強をした。
好きなことも趣味も犠牲にしてひたすら勉強した。
食べる時間すら惜しかった。
その甲斐あって、なんと一発で東大に入ることが出来たのだ。
やればできるんだ!
僕にとって大きな自信になった。
やりだすと面白いもので、これから勉強したいテーマがどんどん思い浮かんで、楽しみになってくる。
あと9年で彼女と釣り合う男になってみせる!
そう気合いを入れ直した僕であった。
しかし、世の中そんなにうまい話ばかりではない。
僕はちょっとした頭痛で病院に行ったところ、不治の病と診断された。
もってあと3年。
そんな風に宣告され、僕は絶望に打ちひしがれた。
彼女に逢いたい!
そんな気持ちが湧いて出てきたけれども、今はまだ会ってくれないかも知れない。
僕は何日も熟考した末、結局、彼女に知らせず逢いに行かないことにした。
彼女との約束は絶対だ。
10年後なら会ってくれる…
きっと彼女はまだ僕に会ってくれないだろう。
僕の人生はもうすぐ終わってしまうから、この先の彼女の人生において、僕と一緒になる選択肢はないわけで、それなら最初から僕という存在のないまま消えてしまうほうが彼女にとってはいいのではないか。
彼女に会わないと決断してからは、逆に僕は吹っ切れた。
今までは彼女に逢うために一生懸命勉強してきたけど、これからは残りの人生を悔いなく過ごすために文字通り死にもの狂いで勉強しようと。
病気のほうは、いろんな治療方法を試してみたが、あまり効果はなかつた。
病気の進行は止められなかったものの、普段の勉強や研究にはそれほど支障がなかったのは幸いだった
僕はやりたかった研究に没頭した。
そして、終わりの時は刻々と近づいた…
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