【 10年後 】

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【 10年後 】

時は流れた。 「ミキ、明後日までにレポートまとめといてくれ」 ボストンのある研究所で働き始めた私、佐藤美希。 念願かなった嬉しさに毎日楽しい日々を送っていたが、10年前のことは決して忘れていなかった。 彼には悪いことをしたかも知れないわ。 でも、彼にもっと頑張って欲しかった。 あの人だって本当は才能あるし、頑張ればきっと実力を発揮出来るはず。 あの時、彼のこと好きだったけれど、隠された才能に私のほうが畏怖を覚えるくらいだった。 釣り合ってなかったのは私のほう。 私が彼に追いつくまでには10年ぐらいかかる…… あの時、確かにそう感じたの。 だから、私は「待つ」と言ったのだけれど、本当はあなたを待たせることになったんじゃないかな。 でも今でも「好きでいてくれる」なんて、虫のいい話かも知れない。 今、あなたはどうしているのかしら。 あれから10年間連絡すらとっていない。 彼がどこにいるかも分からない。 それでも、心のどこかで彼が逢いに来てくれると期待している…
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