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「本当にあなたなの?本当?…ずっと逢いたかった…」
美希はぐしやぐしやに泣き崩れながら必死に声を絞り出した。
「うん。君はずっと『待って』いてくれたんだね!」
「でも、あなたは病気で亡くなったって…」
「ああ、やっぱりそうなのか。」
「え、どういうこと?」
「実は、僕はタイムマシンでここに来たんだ。」
彼はいきなり予想外の話をし始めた。
「君と別れてから、僕は必死に勉強して、東大に入ることが出来たんだ。でもすぐ不治の病と診断されて、僕は絶望の淵に立たされることになった。
でも、残りの人生を前から興味があったタイムトラベルの研究にすべて費やしたのさ。そしてついにタイムマシンを完成させた。
でも、このタイムマシンは不完全で、未来には一度しか行けず、しかも数10分で強制的に戻るシステムになっていてね。
だから、君に逢えるのはこれが最後のチャンスってこと。」
彼はすごいことをやってのけたのだ。
「で、でも、未来に行けるなら、もっと未来に行って、病気の治療薬を貰って帰るって方法もあったのに…」
「それは僕も考えたさ。でも、このタイムマシンはそんなにはるか未来には行けない。
この病気の治療方法が発見されるまではおそらく早くても30年はかかるだろうと言われている。
滞在時間を考えても、未来で薬を手に入れられる可能性はほとんどない。
ならば、もう『君に逢う』の一択だろう」
彼の想いの深さをこの時ほど感じたことはなかった。
「10年後の君なら絶対僕に逢ってくれる、そう信じていた。君は絶対待っていてくれると…」
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