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 今回のクライアントは翔のことをよく知っていて、翔がミスを犯すなどということをほんの少しも疑っていなかった。  翔はこの失敗により、クライアントに大きな損害を与えた。そして自分自身もただでは済まされないと知っていた。  自分が長年暮らしてきた場所に帰ることはできない。  取り戻すことのできないほどのミスをしてしまった以上、今までと同じ生活をすることもできない。  今までの自分は今のこの時点で終わり。名前さえもなくなる。  この暮らしは結構気に入っていたんだけどな。  そう翔は思った。  もちろん他人にとって想定外であろうこの出来事も、翔にとっては想定内のことだった。  今すぐ自分自身を捨て去って姿を消す。そんな準備も抜かりなくしてあった。
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