第一章 未確認飛行物体

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 合衆国でも同様の超音速飛翔体が実用化されているのは掴んでいるが、それとは質的に異る新兵器ということだ。  情報が本当ならば米帝はスクラム・ジェットエンジンを使い捨てのミサイルの駆動ではなく無人機とはいえ反復使用可能なエンジンとして実用化していることを示している。極超音速で巡航飛行する機体というだけで迎撃・撃墜は困難であるものをステルスでさえあるという。  事実であれば看過できないし、国の威信にもかかわる。  それに加えて通常と異るアメリカ合衆国海軍の動き、サンディエゴでドックから出たばかりのアーレイ・バーク級の古参艦ハワードがわざわざ東シナ海まで出張っているなどからこの情報の確度は高く、"目標"を撃墜することと決定した。  なお最終的決断をなしたのは国家主席である。  国家主席の決断を実行すべき人民解放軍は実験段階のバイスタティック・レーダーを"目標"の予定経路まで移設したことを始め、十万単位の解放軍兵士を配置、目視監視をさせる手筈までとらせた。  ステルス技術の胆の一つが、レーダーから照射された電波は発信源とは別方向に反射することにある。暗闇に置かれた鏡が、反射した光を返さない限り懐中電灯で照しても黒く背景に同化するのと同じである。     
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