第一章 未確認飛行物体

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 アーレイ・バーク級巡洋艦ハワードが艦影が東シナ海にあった。中国政府は飛行体の墜落時の回収、または他国による回収阻止の為の配置であると考えていたが彼女からも対弾道弾ミサイルが発射された。  次々に発射されたスタンダード・ミサイル3の内、一つがこの飛行体を直撃した。なお、後にこのスタンダード・ミサイルの命中率の低さは、飛行体が空力的に機動回避を行った為だとの弁明がレイセオン社からある。  飛行体はこの時点でも制御を失なわず飛行を続けていた。  五インチ艦載砲塔が撤去されたハワードの船首楼甲板上には如何にも仮設の不恰好なドブソニアン望遠鏡に似た機材が載せられていた。その筒がぐるりと動き西南に先端を向けるとピタリと停止した。そして微妙に、ゆっくり動きはじめたと思うと急旋回し動きを緩めたと思うと東南に先端を向けて再び停止した。  望遠鏡に見えた機材は艦載実験に供される予定の一ギガワット級のレーザー。実験をすっとばし実験船ではなくハワードに括り付けるように載せられた為、作動するかも危ぶまれたが航海の間も続いた技術者の努力は報われたようだった。  飛行体はがくっと高度を落し進路をぐにゃりぐにゃりと乱した後、再び不規則に機動しつつも飛行を続けた。鹿児島の大隅半島を横切り土佐沖からはS字に機動しつつ減速しはじめ、紀伊水道にさしかかった時には音速をやや超える程度となった。     
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