第一章 未確認飛行物体

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第一章 未確認飛行物体

 劉中将は東海統合作戦指揮センターの発令所の大画面を凝視していた。  そこには無意味に微細で総天然色のアイコンが踊っていた。プラグマティズムに染まったアメリカ人には想像もつかないだろうが、それは軍事的な配置図だった。  しかし無意味な具象性を備えてはいるが、最低限抽象化されたアイコンは画面上で状況を伝えている。  極超音速でステルスな飛行体はほぼ情報どおりの位置、四川省上空へと出現して情報どおりのコースを辿りはじめた。むろん友軍機ではない。  アメリカ合衆国の中枢部に潜った工作員からの情報は、あまりにアメリカ合衆国にとっても冒険主義的でありその信憑性が疑われた。情報の漏洩穴を探るためのフェイクではる可能性が高いと最初は分析されたほどだ。  米帝は極超音速で巡航するステルスの無人偵察機を開発しており、実践テストを兼ねて四川から河南の上空を経て東シナ海へいたるコースを飛せるという内容だった。  中国でも弾道コースをとり大気圏へ再突入後、数百キロを極超音速で滑空して目標に突入するミサイルを実戦配備まであと一歩というところまで開発を進めている。     
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