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「こーちゃん!おつかれー!」 こっちをチラッと見たその顔には疲れが滲んでいる。 「おぅ。」 「疲れた?どうだった仕事は?」 窓枠に体を預けながらそう聞く。 うちとこうちゃんの家は都内密集地の建売物件のお隣同士だ。 息苦しくなるくらい近い距離に同じ様な家が軒を連ねている。 でもこの息苦しい空間に私は感謝している。 大好きなこうちゃんをこうやって独り占めする時間が持てるから。 こうちゃんを見ながらボーっとそんな事を考えていると こうちゃんはネクタイの結び目に慣れた手つきで指を入れる。 そのネクタイをシュッと取り、クローゼットを開けながらこっちを見ずに 「ん?楽勝?」 と見た目とは裏腹な答えを返してきた。 スーツ姿のこうちゃんにも大分見慣れてきた。 いつものだらしなーい感じのヨレヨレTシャツとのギャップがすごいけど。
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