エーデルワイズとプーム

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だがそんなことはなく、やっぱり彼女は夢を先に進めなくなってしまっただけかもしれない。 そうね。ただもしも彼女が実際に彼のことを存在していると思っていたなら、彼女がスランプに陥ったのは彼の存在がこの世からなくなり、その存在を感じなくなったからかもしれない。 彼がなにかしらで命を落としてしまって? それが彼女が考える彼女にとっての最悪の結末かも。でもそんな風に彼女を悩ませる彼は罪な人。いいえ、彼は彼女が頭の中で再現しただけのものかもしれないのだけど。 そうかもしれないがそうではないさ。彼は実在するのだから。 実在する?そうなの? ああ。だが実際にいるとなればどうだろう?彼がどんな人なのか君は気になるかい? そうね、もちろん。でも私はそんないるのだかいないのだか曖昧な人のことよりも、その彼を夢見る女性なんかと交際をしてしまうその誰かの方が気になるわ。 どうして? 彼はどんな気持ちでそんな彼女と付き合ったものかしら?彼女に関する話の中で一番不可解というか、わからないところはそこなの。他については不思議なところはあれど概ね全てにおいて、すべての人物において共感出来てしまうもの。 そう。 彼女が彼と付き合ったっていうその事はどちらが他人に話したものなのかしらね。 どっちか?それは彼女か彼ということ? だってそうでしょう?そのいずれかの内のどちらかでなければ誰なのよって話だわ。その出来事は彼女が遠い中旅をして見ず知らずの土地に来てのことなんだから。見ず知らずの人についてなら何をしたところで人々は噂もしようがないわ。 そうだね。それは彼女だろうか。 彼女が男の人と付き合っていたと自分から人に話したのにはなにか意図があるのかしら? 大した理由は無いと思うな。彼女は自分の旅についてをよく人に語っていたようだね。気の置ける相手に関わらずその都度ちょうどいい話題として。だからこそこうして今僕も彼女についての話をすることができているわけだが。きっと付き合うことになった彼のこともまたその一環として自然に語ったに過ぎないのだろう。 そういうこともあるかもね。でももしそうでなかったならどうかしら? 彼女と付き合う男性自らがそのことを人に話したと。 その理由は?
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