エーデルワイズとプーム

6/8

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
日常的な生活を送っていたなら決して手に入らないものさ。彼女は都市の中に確保した自分の居場所で健やかなる日々を過ごしてきたものの、彼女から見た都市の住人たちの服装は変わり映えのないものだっただろう。 例えばそうかもね。 みんな同じ服を、制服みたいなものを着ているのというわけじゃない。 わかるわ。毎日同じ服を着ているというわけでもなくコーディネートのバリエーションはそれぞれにあるものだしそれぞれがちゃんと意識していたりするものなんでしょうけど、でも文化的なものやトレンドなんてものはみんな大抵人のものを真似て取り入れるとか、雑誌とか。お店に並ぶものからしてそうなんだからしょうがないの。 商売だからね。売れると期待できる服しか置いてはおけない。 売り場は限られているもの。二つ三つくらい離れた都市に出向いたところできっと変わったものは見られないでしょうね。トレンドはほとんど同じと言っていいくらい。七つくらい離れた都市ならなんだか目新しい恰好やデザインに身を包んだ人たちがぽつぽつ見えだして、十五か二十の都市を過ぎる頃にはもうね。 まったく見たことの無いようなものを身にまとった人たちの群れに出会えるかな。 それを期待して彼女は旅に出たのだもの。それは女性達や男性達の髪形だってそう。髪形といえばその色や形だけでなく、頭に飾り付けるものとか。 または匂いとか? ひどく臭く思えてもそれがトレンドだったりするならこういうものなのかと感心することもできると思わない?彼女なら特に。 そうだね。また同じ場所で暮らしていく中では周囲は自然と見知った人になっていくだろう? ええ、その人の人望によるでしょうけど一般的な人ならそうなるわ。だって顔を合わせる回数は増えていくばかりなのだもの。 見知った人達は自分に対してそれなりの態度でもって接してくれるものだし自分もまたそうだが、そういったことを繰り返していくだけでは人の振る舞いはそういうものだとしか知ることが出来ない。 旅に出れば見知らぬ人に見せる人の優しさとか善意とかそういうものに触れることが出来るということね。 知らないものに対する冷たい態度や警戒の目にもまた容易に出会えるし肌で感じることができる。 ひどく人見知りな人の様子も見ることが出来るかもしれないわね。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加