いつも

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てくてくてくてく。 前を歩くきみの後ろ姿を見ながら、歩く。 てくてくてくてく。 今年は暖冬かな。もう11月も半ばだというのに、寒くて布団からでたくない!!と思ったことはまだない。 それでもこの頃は少しだけ肌がぴりっとする空気のなか、柔らかくて暖かい日差しの下、いつものように散歩する。 至福。 …出勤までの時間に追われていなければ。 昨日ぐだぐだ夜遅くまで起きていたから、いつもより少し起きるのが遅れた。 別に起きていたくて起きていた訳じゃない。眠れなかった。 毎日毎日、もの凄い勢いで仕事をこなして、帰宅したらなんだかぐったりで。 あー疲れたな~なんてちょっとぼけっとしてたらあっという間に時計の針はてっぺんで。 寝るまでに「やらなきゃいけないこと」をざざっとやって、なんとか眠って。 あっという間に朝が来て、出勤までの間の「やらなきゃいけないこと」を追われるようにこなす。休む間もなく出勤して、の繰り返し。 これでいいのかなぁ? 時々、思考が囚われる。 てくてくてくてく。 かしかしかしかし。 歩くたび爪がアスファルトに擦れて、微かな音がする。 たまに振り返って、まるっこいうるうるの瞳できみがこっちをみる。 大丈夫?ついてきてる? ふふ。 大丈夫だよ、ちゃんとついてきてるよ。 それが通じたように、きみはまた前を向いて歩き始める。 ついて歩く。 そんな日常。 でも、日常が突然そうでなくなることがあることも知ってる。 そうなってみて初めてわかるんだ。 こんな風でいいのかなぁ流されてるなぁって思う日常にも、こんなに幸せが溢れてる。 日差しの入る明るいリビングで慌ただしく飲むコーヒーも。 気持ちがいい天気のなかの散歩も。 かしかしといういつものきみの足音も。 忙しい!やってられない!ってそんな愚痴を優しく聞いてくれる君も。 無くなってしまったら、それは色も音も匂いもない、ただの無。 ほら、空を見上げれば、今日もどこまでも続くようなぬけるような青空。 漂う朝ご飯のにおい。 きみの元気なうしろ姿と、隣を歩く君の笑い声。 さぁ。 今日も前を向いて歩こう。
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