O-side-

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 こうしてのんびりしているうちに、外からガチャ、という音が聞こえた。  このホテルはどうも壁が薄い・・・。そのため、この前は寝ているときに隣の部屋の人だと思われるいびきも聞こえた。正直その次の日の研修は眠気で散々だった。もう少し大人しくできないのか・・・。  なんとなく立ち上がり、ドアの前まで足を運び、ドアにあるのぞき穴に目をあてがった。こうして少しだけ人間観察をするのがこのホテルに来てからの日課になっている。酔っぱらったおっさんがふらふら歩いたり、若い女性が勢いよく転んだり、このホテルはなかなか面白い人だらけだ。変わったホテルだと自分では思っている。  だが、今回は違った。自分の部屋の向かい側、斜め右のドアが開いた。そこには少し大きめの段ボールを抱えた、先ほど急ぎ足でエレベーターに乗り込んだ彼女だった。やはり、先ほど頭の上で光っていたエレベーターの数字、それは彼女のものだった。そして偶然にも彼女は俺の斜め右の部屋にいる・・・。  その時、なぜか喜んでいる自分がいた。胸があったかくなった。この時の胸があったかくなったのはただの興味本位かもしれない。よく見るとニキビがある、正直に言って普通な女の子なのに 、なんだか彼女に魅力を感じた。 気づけば段ボールをもって、またしても急ぎ足の彼女がのぞき穴の中から消えてしまうまで、俺は目をはなせなかった。  運命というものは突然やってくるものなのだろうか。  神はこんななんの変哲のない既婚変態男に何をさせたいのだろうか。わからない。が、俺はしばし神様の遊びに付き合ってやろうとおもった。その日は彼女の姿を思い浮かべながら、研修している奴らの食事の誘いであろう音色を聴きながら、ベットに横たわり、そのまま意識を手放した。  起きた時には朝だった。それに、お腹は無料券を無駄にしたと言わんばかりに文句をたれていた。これもすべて彼女のせいにしよう。いや、してやる。そういうことにしておこう。  その時から、俺の日課だった人間観察が、彼女の観察に変わった。変態扱いするならしてくれ。彼女のよくわからない魅力のせいだ。多分。仕方のないことだ。
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