天空覗く、

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天空覗く、

 空を覗くと雲が応えた。  ふわふわと形を変える雲はまるで住む世界が違うかのように自由を生きている。 「ふおー、良い天気」 「ひゃっ」  自分しかいなかったはずの場所に突然他人の声がして振り返るとそこには彼がいた。 「空、撮ってたの?」 「・・・ん」 「綺麗だよなぁ」 「・・・そだね」  私は空を見上げることに夢中で彼が言ってることなんかどうでもよかった。空を見上げたまま呟く。 「帰って」 「なんで」 「・・・じゃま」 「ひど」 「・・・空に雑音が入って嫌。お願いだから邪魔しなぃで」 「雑音ってなんだよ。空は音じゃねえだろ」 「天空は、大気のメロディを、奏でるの」 「意味不明だなぁ」 「・・・言葉の・・・綾じゃんか」  頬に空気を溜めて不服の意を示しながらカメラの影に顔を隠した。 「よーするに、俺が目に映るのが邪魔だと」 「そぉ。空に包まれてたぃ」 「ふーん・・・じゃあさ」  フワッと、優しい暖かさと共に暗転する。 「へぁっ」  何が起こったのかわからなくて変な声が口から漏れ出る。二三秒フリーズしてからやっと彼が私を抱きしめたのだと気付いた。 「これで俺は見えない」 「・・・空もみぇない。本末転倒も良いとこ」 「盲点だったわ」 「嘘ばっか」  私は何も見えなくて開けてる意味のない目をそっと閉じた。 「・・・でも、いいよ」 「ん?」 「・・・ここからも、大気のメロディ、きこえるから」 「え・・・」  熱くなった顔を隠したくてギュッと彼を抱きしめ返せば彼は困惑したような声を出した。 「大気の歌って心音なの?」 「・・・ばか。言葉の綾だってば」  目を閉じて覗いた世界は、優しく響く命のメロディ。
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