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チャイムの音に思考に沈んでいた意識が浮上する。
机の上を片付けながら、なんとか昨日のことを思い出せて満足する。
そうか、あの人だったのか。
あの時は逆光であまり顔が見えなかったこともあって全く分からなかったが
まあ、昨日の夕空が綺麗だったからそっちに意識が持っていかれていたのもある。
仕方ないのだ。晴れた日の夕暮れ、水色とピンクと紫のグラデーションは特にお気に入りの空だ。
徐々に暗くなって行くあの目を奪われる美しさ。
今日はどこで見ようかといくつか脳内で候補を挙げていると、スパン!と教室のドアが開け放たれる。
「青!!」
そうだった。
「今行きますね」
再び無数の好奇の目が刺さるのを感じつつ、弁当の入ったミニバッグを片手に立ち上がる。
「大丈夫。心配してくれてありがとね」
何かを言いかける木野瀬さんにそっと声をかけて先輩の元へ向かう。
「お弁当とか持ってますか?」
「朝買った」
「なるほど。中庭でいいですか?」
「ああ」
「了解です。行きましょうか」
短い会話の後中庭へ向かう二人。
その背中を苦い表情で見送るのは、木野瀬だけではなかった。
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