出逢う

8/9

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「少ないな。足りるのか?」 「先輩こそ。バランスとか少しは考えましょうよ」 互いに率直な感想を述べあう。 かたや小さいタッパーにおかずが少しとおにぎり1つ かたやメロンパンとチョコクリームパンと砂糖のかかったデニッシュパン。 「甘党ですか。パンオンリーだけでも相当ですけどさらに全部甘い系って極めてますね」 「腹にはたまるから問題ない」 「そのうち太りますよ」 ほぼ初対面にもかかわらず遠慮の少ない会話が飛び交う。 いただきます、と律儀に手を合わせるとそのまま黙々と食べ始める。 咀嚼音やパンの包みの擦れる音。 校舎側からは笑い声が時折聞こえるが、中庭はそれに比べ静かなものだ。 となりの先輩が食事に集中しているのをいいことに、おにぎりを齧りながら教室よりはるかに広くなった空を見上げる。 太陽の眩しさに目を細める、わずかな目の痛みがいっそ心地よくさえ感じる。 「昨日も、そうして見上げていたな」 声の方へ視線を移すと、空袋を丁寧に畳みながら先輩は言葉を続ける。 「好きなのか」 問いかけというより確認に近い。 静かなその声に自然と笑みがこぼれる。 「はい、昔からずっと」 「空が好きです。色が日によって、時間によって違くて。雲が流れる様も、早さも形もいつも違う」 「目で追わずにはいられなくて」 「いつまででも見ていたくなる。できる限り近くにいきたくなる。手に届かないからこそ、どうしても」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加