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「少ないな。足りるのか?」
「先輩こそ。バランスとか少しは考えましょうよ」
互いに率直な感想を述べあう。
かたや小さいタッパーにおかずが少しとおにぎり1つ
かたやメロンパンとチョコクリームパンと砂糖のかかったデニッシュパン。
「甘党ですか。パンオンリーだけでも相当ですけどさらに全部甘い系って極めてますね」
「腹にはたまるから問題ない」
「そのうち太りますよ」
ほぼ初対面にもかかわらず遠慮の少ない会話が飛び交う。
いただきます、と律儀に手を合わせるとそのまま黙々と食べ始める。
咀嚼音やパンの包みの擦れる音。
校舎側からは笑い声が時折聞こえるが、中庭はそれに比べ静かなものだ。
となりの先輩が食事に集中しているのをいいことに、おにぎりを齧りながら教室よりはるかに広くなった空を見上げる。
太陽の眩しさに目を細める、わずかな目の痛みがいっそ心地よくさえ感じる。
「昨日も、そうして見上げていたな」
声の方へ視線を移すと、空袋を丁寧に畳みながら先輩は言葉を続ける。
「好きなのか」
問いかけというより確認に近い。
静かなその声に自然と笑みがこぼれる。
「はい、昔からずっと」
「空が好きです。色が日によって、時間によって違くて。雲が流れる様も、早さも形もいつも違う」
「目で追わずにはいられなくて」
「いつまででも見ていたくなる。できる限り近くにいきたくなる。手に届かないからこそ、どうしても」
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