第1章

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「おめでとうございます!あなたは勇者候補生に選ばれました!」 とある青年、高梨悠はどこかでそんな言葉を耳にした。 勇者って何だろう? 少年。いや、男であるならば一度くらいは憧れたりするものではないだろうか? ここで考えてみてほしい。 自分が勇者、もしくは正義の味方に憧れたのはいつだったのだろうかと。 おそらく多くの人は遠い昔の出来事だと感じるだろう。 人は年を重ねると共に勇者や正義の味方に憧れるということは無くなる。 これは成長というものである。 人は本質的に勇者になることは出来ない。 中には勇者や正義の味方に憧れ、人を救うような職業に就く人もいるであろう。 しかし、結局は仕事である。勇者ではない。 職業欄に堂々と勇者などと書くような人は周りから奇異の目で見られるはずだ。 当然である。 実際、勇者や正義の味方とはそのようなものだ。子供の戯言や妄想の類に分類されてしまう。 では、改めて問いたい。 勇者って何だろう? ある人は言った。 「みんなのヒーロー」と。 またある人は言った。 「己の信念を最後まで貫き通すもの」と。 勇者のあり方は人によって違うのだ。これを言い換えれば勇者とは人それぞれ違う概念のようなものではないか?勇者を概念と捉えるのであれば無限の可能性が秘められていると言っても過言ではないだろう。 無限の可能性。 人生で一番無限の可能性が秘められている時期はいつだろうか?これはあくまで主観だが、おそらく若い時期であろう。 その若い時期で最も可能性が秘められた時期はいつだろうか?学生から社会人になる一歩手前の時期。 そう高校生である。 これはそんな無限の可能性が秘められた時期にある日突然勇者候補生に選ばれてしまった青年の物語。 目の前に「ここはどこだろう」 最初に出た疑問はそれだった。 現代世界?異世界?それとも夢の中? 俺は今現在自分のいる世界を認識出来なかった。 というかそもそもどちらが上でどちらが下なのかすら認識出来ない。雪崩に巻き込まれたという訳でもないと思うのだが。とにかく今現在自分がどういう状態になっているのか分からないというのが率直な俺の意見だ。 「困ったなぁ」 どこかの映画で聞いたことがあるセリフを呟く。困ったなぁと呟いた所で世界が急変したり、現実世界に戻されるというようなことは起こらないはずだ。 「なんなんだよいったい」
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