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「ごちそうさま!」
最後のおいなりさんを食べ終わるのを見計らって
「はい、温かいコーヒー」
と、家で作って来た少し甘めのコーヒーを差し出すと、碧樹はおいしそうに飲んだ。
私も自分の分をカップに注いで飲んでいると
「ねぇ、ハル」
と呼ばれた。
「ん?」
「ハルが病院にいる間、俺毎日何してたと思う?」
唐突な質問に首をひねる。
「サーフィンじゃないの?」
「それは冬場以外ね。いくら湘南といえども真冬の海は初心者にはきついわ」
それもそうか、とちょっと考えてみる。
「あ!わかった!八幡様でしょ。目が覚めたら枕元にお守りがたーくさんぶら下がっていてびっくりしたんだから」
「当ったりー。八幡様だけじゃなくて、鎌倉中の神社仏閣にお参りしたんだ。俺だけじゃないよ、宮内や昂太や長谷川、齋藤にナツも」
「そうだったんだ。おみくじまでベッドの柵に結わいてあって、看護師さんも笑ってたよ」
「大吉だけな。病の所赤線引いてあったろ?」
「大病必ず治る、とかね」
あのおみくじを見て、胸がぎゅっと苦しくなったことを思い出した。
みんながどんな気持ちでこれを引いてくれたんだろう。
どんな思いでここに線を引いたんだろう。
有難くて、全部大事にとってある。
いつか八幡様に納めに行く時まで、私の宝物だ。
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