第十四章 未来へ

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「ごちそうさま!」 最後のおいなりさんを食べ終わるのを見計らって 「はい、温かいコーヒー」 と、家で作って来た少し甘めのコーヒーを差し出すと、碧樹はおいしそうに飲んだ。 私も自分の分をカップに注いで飲んでいると 「ねぇ、ハル」 と呼ばれた。 「ん?」 「ハルが病院にいる間、俺毎日何してたと思う?」 唐突な質問に首をひねる。 「サーフィンじゃないの?」 「それは冬場以外ね。いくら湘南といえども真冬の海は初心者にはきついわ」 それもそうか、とちょっと考えてみる。 「あ!わかった!八幡様でしょ。目が覚めたら枕元にお守りがたーくさんぶら下がっていてびっくりしたんだから」 「当ったりー。八幡様だけじゃなくて、鎌倉中の神社仏閣にお参りしたんだ。俺だけじゃないよ、宮内や昂太や長谷川、齋藤にナツも」 「そうだったんだ。おみくじまでベッドの柵に結わいてあって、看護師さんも笑ってたよ」 「大吉だけな。病の所赤線引いてあったろ?」 「大病必ず治る、とかね」 あのおみくじを見て、胸がぎゅっと苦しくなったことを思い出した。 みんながどんな気持ちでこれを引いてくれたんだろう。 どんな思いでここに線を引いたんだろう。 有難くて、全部大事にとってある。 いつか八幡様に納めに行く時まで、私の宝物だ。
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