第十四章 未来へ

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「昔さ、よく神社に遊びに行って、掛けてある絵馬に落書きしたりしたじゃん」 突然の碧樹の昔話に私は大慌てで否定した。 「えっ私はしてないよ。碧樹でしょ?」 「俺だって悪いことは書いてないよ。その人の願いがかなうように、かぶせてお願い!って書いたりニコちゃんマーク描いたり」 「そうだった、そうだった」 「だけどやっぱりあれは悪いことだったかなって思って気になっちゃって。今更だけどあの時はごめんなさいって謝ったり」 「あははー今更だな本当に」 碧樹の謎の行動を想像して笑ってしまった。 「あと、おんめ様にも行った」 「えっ!おんめ様は安産祈願のお寺じゃん」 地元では「おんめ様」と呼ばれる大巧寺は小町にある安産祈願で有名なお寺だ。 「知ってる。子供の頃さ、ハルのお母さんが言ってたんだよ。ハルが生まれる前におんめ様にお参りして、性別占いしたんだって」 「その話、知ってるー。封筒に入ってる紙の色で性別を占うやつでしょ?確か白だと男の子で、赤だと女の子」 「それ。聞いたらうちの母さんもやっててさ。俺の時には白い兜が出て男の子だ!ってなって男の子の名前を考えたって。だけど」 「そうだよ!私の時も白の兜だったんだよ。だけどお母さんはどうしても女の子が欲しくて、でも男の子かもしれないからどっちでもいいようにハルヒって名前にしたって話でしょ?」 正直、この話は子供の頃から聞かされて耳にタコだった。 大人しい碧樹と比べられて、どっちが男の子かわからないと言われるたびに、ママはこの話を持ち出したのだ。
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