第十四章 未来へ

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だって本当に顔を見たくて、毎日碧樹が来てくれるのを待っていた。 後遺症が出て、明日自分がどうなるかもわからなくて、不安で不安で… 碧樹が来てくれたら、少しの間でも忘れられそうな気がした。 歩けない自分を忘れて明るく笑ってくだらない話ができるかもって。 だけど碧樹は来てくれなくて、私は一人で向き合うしてなかった。 毎日こっそり泣いて、一人でリハビリに行って、絶望してまた泣いて…。 だけどそうしている間に、気が付いたことはある。 これは私が背負っていくことなんだって。 自分で自分と向き合って、悲しみも絶望も受け入れて、立ち上がる為の時間なんだって。 まだ完全に覚悟ができたわけではないし、将来の事を思うと不安でいっぱいになるけど。 それでも一歩ずつ前に進むしかないから。 私は私の未来に絶望なんてしたくはないから。 だから昨日とは違う自分でいられるように、今日できることは明日に回さないというルールを決めた。 自分の未来に自分で責任を持てるように。 いつの間にか自分の思いに沈み込んでいると 「俺ね、今勉強してるんだ」 唐突に碧樹が言った。 「勉強?!碧樹が勉強?!…あ、受験勉強か」 驚いた後、納得したように言うと、碧樹はもっと私を脅かせることを言った。 「うん。来年歯科大受けようと思ってる」 「歯科大?!碧樹歯医者になるの?」 驚きすぎて顎が外れるかと思った。 そんな私を見て、碧樹はにやっと笑った。
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