105人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんかね。私今すごくじっとしていられない気分なの」
突然の私の言葉に驚いて「へ?」と言う碧樹に
「砂浜を歩きたい。碧樹、おんぶして」
と言うと碧樹はびっくりしたように「お、おお」と言って、すぐに立ち上がった。
「これ、貸して。ハルが濡れないように」
私が膝に掛けていたタオルを、ウェットスーツを着た背中に羽織ってから、碧樹は私をおんぶしてくれた。
「よいしょ」と立ち上がると、びっくりするぐらい軽々と歩き出す。
思っていたよりも大きな背中に、がっしりとした肩、それに比べて細い腰。
私の顔の目の前で、薄茶色の髪の毛がふわふわ揺れてくすぐったい。
「こんなの何年ぶりかな」
照れ隠しにつぶやくと
「昔はハルの方が大きかったから、よく俺がおぶってもらったよな」
と言う。
碧樹もちゃんと覚えていた。
「そうそう、碧樹は小さくて細くてひょろひょろで」
「あー馬鹿にした」
「ふふっ、でもとっても温かかった。小さくて白くて可愛くて」
「猫かよ」
「そうだよ。可愛い白猫みたいで。私が守るっていつも思っていたよ」
「ふっ形勢逆転だな」
「ほんと、いつの間にこんなに大きくなったのー。こんなに高い目線でいつも見ているんだね。ねぇ重くない?」
最初のコメントを投稿しよう!