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やっぱり届いてはいなかったみたい。
すぐに碧樹が言い返して来る。
「馬鹿はハルの方だろ。誰が簡単に下すかよ。どんだけ苦労して捕まえたと思ってんだ。もう絶対離さないって決めたんだから。大人しく俺に背負われててくれ」
今度こそダメだった。
完全に打ち抜かれてしまった。
碧樹の首に回した腕が、震えているのが自分でもわかる。
このままでは気付かれてしまう。
私が泣いていることに…。
私は頭を上げて、碧樹の耳元で叫んだ。
「碧樹っ!」
「うわっ」
驚いた碧樹が声を上げる。
「走って!!」
いきなりの私の命令に碧樹は
「は?何をいきなり」
と言い返した。
「いいから、走って!今砂浜を激走したい気分なの。はやくっ」
「わかったよ!捕まってろよ。いくぞ!」
碧樹は走り出した。
裸足のまま、この砂浜を。
私は碧樹の背にしがみつきながら、「もっと、もっと」と煽った。
片手をぶんぶん振り回して
「もっと、もっと速く!!遅いよ碧樹。ほら、江の島に向かってはしれー!」
と叫ぶ。
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