第一章 おはよう

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「おはよー!!碧樹、起きてるー?」 一瞬の間のあとに 「おお、起きてる、起きてる」 と声がした。 この声は、まだベッドの中だ。間違いない。 スマホを持ったまま、だだだだだっ!と階段を駆け上った。 勢いよくドアを開けると、やっぱりまだベッドの中にいた。 ギリギリ起き上がってはいるけど、目は開いていない。 「今日もいい天気だよ!」 と窓を開けると、やっと目を開けた。 いつものようにベッドの上に着替えを並べて、持ち物のチェックをする。 「ほらぁ、下で待ってるから、早く早く!」 「へーい」 やる気のない返事を聞いて、部屋を後にした。 碧樹とは向かい同士の家に住む、幼なじみだ。 今年高校二年の同級生。 五歳の時に碧樹が両親と一緒に、鎌倉の実家へ引っ越して来てからの付き合いで、小学校からずっと一緒。 小学二年生の時に、お母さんが亡くなって、それ以来私が碧樹のお世話係になった。 碧樹が支度をして降りてくるまでの間、私は仏間に向かう。 仏壇の前で手を合わせて、碧樹のお母さんに報告をするのが日課になっている。 「碧樹は今日も元気です!」 報告と言ってもその程度なんだけど。 でも、お母さんが一番聞きたいのはそれなんじゃないかな、と勝手に思っている。 碧樹が元気で、今日も楽しく一日を過ごすこと。 私にとっても、それが一番大切なことだから。
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