第二章 スクールディズ

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江ノ電の駅のホームは、とても混んでいた。 四月も半ばだというのに、今が桜の見頃だからだ。 今年は開花が遅かったせいで、今がピークになっている。 通勤・通学のお客さんと観光客が入り乱れて、電車は満員。 つり革に届かない場所に立ってしまった私に、碧樹が救いの手を差し伸べてくれた。 「ハル、ほら」 右手でつり革につかまって、空いた左手を差し出した。 「あ、ありがと」 なんとか右手を伸ばして、碧樹の左手のひじの上をつかんだ。 これは、腕を組んでいるんじゃないよ。 ころばないようにつかんでいるだけ。 そう思いながら、ちらっと碧樹を見ると、顔を真っ直ぐ窓の外に向けている。 色白で、薄茶色の髪。 ちょっとまぶしそうに細められた目も、淡い茶色だ。 周りの学生の中では、頭一つ分抜けている。 いつの間に、こんなに背が伸びたんだろう。 昔は私の方が大きかった。 一緒にスイミングに通っていた時も、泳ぐのも走るのも、私の方が速かった。 力も強くなって、つかんでいる腕もしっかりと私を支えてくれる。 あんなに小さかったのになぁ、とちょっと嬉しいような、寂しいような、不思議な気持ちになった。
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