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「分かってんならからかわないでください。つまりこれは何か重大な情報が含まれてると?」
手に取って調べてみた。
自分の著作が被害者の所持品で、それ調べる作家ってなかなかいないだろうな。
「書き込みも傷も特殊インクの跡もない。調べ済だ」
「でも何の考えもなしにプロが買わないですよね。内容に意味があるとか? 何だっけ」
「表の特殊工作員女主人公と裏の殺し屋男主人公が出合い、あれこれあった結果『仲介者』みたいな組織を作り上げるってのが大筋……作者本人に言わせるなよ」
自分で言うと恥ずかしいっつの。
「買ったばっかりなら、内容知らなかったかもよ?」
「このシリーズ、ドラマ化されてんだぞ。皆知ってるだろ」
「自慢かナルシスト」
自慢じゃなく事実だ。
「買ったのは意味ある行動のはずだ。本のあった場所に何か仕込んだ、レジまたは店内のどこか誰かと何か受け渡しした、店内にメッセ仕込むためのカモフラ……」
「ラツヘって血文字か踊る人形あったら簡単なことだったのにな、ワトソン君」
「ちょいちょい小ネタはさむな。そんくらい有名どころなら分かるが、お前時々マイナーなの持ってくるから分からねえ」
「そこらへんは全部監視カメラ分析して調べた。外れだよ」
所長が答える。
「大手チェーン書店に入り、イチオシコーナーの中のこれを選んだわけだが、他に手に取ってた本のリストがこれだ」
「タイトル、出版社、発行年、著者……どれも関連性皆無、暗号にもなってないですね」
「『表』は早くアジト見つけて捕まえたくて、意味解いてほしいんだとさ。『黒王』の名で使い捨ての駒集めてる組織がいたら困るからな。『裏』としても偽物は消したいと希望が一致してる」
「はいはい、分かってますよ」
被害者の仕事の履歴を読みこんでいく。機密事項を『仲介者』の権限で開示させたな。
依香が言わずとも欲しい時に地図や筆記用具くれる。兄妹の意思疎通。
「小説もそんくらい真剣にやりゃいいのに」
「あれは創作意欲わかないとだし、専門ジャンル以外やれっての無茶だろ」
「だからそれなら受けるな」
「俺様は売れっ子だから、あれこれ仕事来んの。ところで駄目だ、まったく意味分からん」
「隠語がちょうどこの本に載ってるんじゃないの?」
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