2 天才イケメン高校生作家、バイトへ行く

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「分かってんならからかわないでください。つまりこれは何か重大な情報が含まれてると?」  手に取って調べてみた。  自分の著作が被害者の所持品で、それ調べる作家ってなかなかいないだろうな。 「書き込みも傷も特殊インクの跡もない。調べ済だ」 「でも何の考えもなしにプロが買わないですよね。内容に意味があるとか? 何だっけ」 「表の特殊工作員女主人公と裏の殺し屋男主人公が出合い、あれこれあった結果『仲介者』みたいな組織を作り上げるってのが大筋……作者本人に言わせるなよ」  自分で言うと恥ずかしいっつの。 「買ったばっかりなら、内容知らなかったかもよ?」 「このシリーズ、ドラマ化されてんだぞ。皆知ってるだろ」 「自慢かナルシスト」  自慢じゃなく事実だ。 「買ったのは意味ある行動のはずだ。本のあった場所に何か仕込んだ、レジまたは店内のどこか誰かと何か受け渡しした、店内にメッセ仕込むためのカモフラ……」 「ラツヘって血文字か踊る人形あったら簡単なことだったのにな、ワトソン君」 「ちょいちょい小ネタはさむな。そんくらい有名どころなら分かるが、お前時々マイナーなの持ってくるから分からねえ」 「そこらへんは全部監視カメラ分析して調べた。外れだよ」  所長が答える。 「大手チェーン書店に入り、イチオシコーナーの中のこれを選んだわけだが、他に手に取ってた本のリストがこれだ」 「タイトル、出版社、発行年、著者……どれも関連性皆無、暗号にもなってないですね」 「『表』は早くアジト見つけて捕まえたくて、意味解いてほしいんだとさ。『黒王』の名で使い捨ての駒集めてる組織がいたら困るからな。『裏』としても偽物は消したいと希望が一致してる」 「はいはい、分かってますよ」  被害者の仕事の履歴を読みこんでいく。機密事項を『仲介者』の権限で開示させたな。  依香が言わずとも欲しい時に地図や筆記用具くれる。兄妹の意思疎通。 「小説もそんくらい真剣にやりゃいいのに」 「あれは創作意欲わかないとだし、専門ジャンル以外やれっての無茶だろ」 「だからそれなら受けるな」 「俺様は売れっ子だから、あれこれ仕事来んの。ところで駄目だ、まったく意味分からん」 「隠語がちょうどこの本に載ってるんじゃないの?」
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