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3 天才イケメン高校生作家は限定シスコンナルシスト
「アジトは国内某所のウィークリーマンションだったぞ」
帰宅後、俺は自室でくつぎながら依香に言った。
「特殊詐欺グループは場所の特定を避けるため、一定期間でアジトを移動させてた。捜査官を消したとはいえ念のため移転しようとしてたが、ギリギリ間に合った」
「で、一人で乗り込み、制圧したんか。さすがご本人様。偽物に容赦なしか」
「はは。ああそうそう、偽物は黒ばっか着てたぞ。アホかって、今時そんな格好してたらいかにも怪しいって言ってるようなもんじゃんか」
「確かに街中いたらあきらかに不審人物」
「しかもこのイケメンな俺とは似ても似つかない不細工オヤジ。あれが名前騙るとか、俺の美意識が許せねぇ。つか、黒着てるから『黒王』なんじゃねーんだよ」
「態度がデカくて、名字に王の字入ってるから『王』。普通の男子高校生の普段着で、何もしなければイケメンなのに、いざとなるとどす黒いオーラで見る者威圧するから『黒』。―――だろ」
俺は無言で背を持たせかけた。
「兄貴、やりすぎてないよな?」
「気絶させて縛っただけだ。血は一滴も流してないし、室内も汚していない、レンタル家具も壊してない。マンションの持ち主は一般人で部屋は借り物なんだから配慮しないとな」
「それは何より。事故物件になったらまずいからな。それでISBNコードの数字が〒と番地に部屋番号だったって……すごい偶然」
「いや、逆。たまたまアジト移転先を担当者がネットで選んでた時に机上にこの本がひっくり返ってて、数字と番地が同じだって気づき、面白いってそこ借りたんだと。被害者はその話知ってたから身の危険が迫ったと知り、買ったらしい。犯人は組織の用心棒でそんな話知らなかったから、被害者の所持品に本あっても気に留めなかった」
「だとしても本物の著作だったってのはできすぎだと思うけど」
「事実は小説より奇なりって言うだろ」
まさしくな。
……ときに、と依香が一番最初に話題を戻した。
「兄貴。締め切り。今日」
テヘペロ。
「できてない☆」
おどけてみせた。普通ならこのイケメンスマイルでごまかせるが、実の妹には通じない。
依香は盛大なため息つきつつも、ものすごく嫌そうにUSBメモリ差し出した。
「代わりに作っといた。兄貴が乗り込んでひと暴れしてる間に」
「おっ、マジで? さすが俺の妹。助かるぜ。よく分かってるう~」
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