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・・・本来、一パーセント以下である人間の皮膚呼吸を、肌に密着したスーツが40パーセントにまで助長し、酸素が薄い場所や水中での活動を可能にする。更に、高濃度に圧縮したラナチウムを織り込んだカーボンファイバーは、α線β線γ線X線全てを遮断することが出来、取り込んだ放射能をエネルギーに変換し、身体能力を爆発的に高める。また、ヘルメットには、暗視機能やサーモグラフィー機能が搭載されており、自動照準システムは・・・・・・ 班長の解説を聞きながらヘルメットを眺めていた私は、こめかみ辺りに入れられたロゴを見つけた。 MITUBISHI Industrial Corporation ミツビシは、旧世界の頃の書籍でもよく見かける名だ。今年で創立198年だったかの(元)日本の大企業。どうやって「ラグナロク」を乗り越えたかは知らないけど、その存在は紛れもなく現代の(元)日本人達の誇りに違いない。 ナオキ=マツシタの言う、「日本人の心意気」の意味が分かった。 班長は次々と装備の説明をしていった。卓上に映し出される銃やブレード、飛空艇等は、どれも私達の与り知らぬ所で綿密に練り上げられていたのだ。そして、計画そのものまでも。 「すげぇな・・・。」 フランクが呟いた。他の班員も、恍惚とした表情で装備の3D体を見つめている。 無人探査ドローンの解説を終えた班長はオルタナティブを切り、代わりに卓上テレビ電話の電源を入れた。 「これらの装備全てを提供してくれた、『ミツビシ』のオオカワラ氏が諸君らと話したいそうだ。」 そう言って回線を繋ぐ。沈黙、そして数回のコールの後一人の男が出た。     
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