13/30
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「このキューブには、先程見て頂いたスーツに使用されている『ラナチウム』が大量に内包されています。最近新たに発見された物質なのでご存じないかもしれませんが、ラナチウムはエネルギーに反応し、それを取り込んで自らのエネルギーとして放出する特性を持っています。つまり、如何なるエネルギーをも相殺する事が出来る、ということです。我々はそこに着目し、大地に蔓延する放射性物質を相殺出来ないか、と考えました。我々は試行錯誤の末、大きさ1μm以下の、エネルギーを含む粒子のみと反応させ、相殺させる、つまり消し去る事に成功したのです。放射性物質は、大きくても1μmに満たず、人体を構成する粒子はそれよりも大きい。つまり、人体に害をなす事無く放射能のみを消し去る事が出来るのです。まだ試作品段階ですが、キューブ一個で相殺出来る放射性物質の面積は、約百二十万平方メートル。この南アフリカと、ほぼ同じです。仮に、計画の目標範 囲をユーラシア大陸全土とするなら、キューブは46個あれは事足ります。そして、その一つ一つをあなた方が運び、配置し、作動させる。それがこの計画の全貌です。時間は掛かるでしょうが、私はこのプロジェクトが成功すると信じています。」 ラナチウムという新物質が、五年程前に新たに発見されたのは私も知っていた。だけどその新物質が、人類を救う鍵になるとは。人類の英知ってすごい。 数秒の沈黙の後、オオカワラ氏のプレゼンテーションにその場にいる全員が惜しみ無い拍手を送った。オオカワラ氏は満足気に微笑むと、拍手を穏やかに制止した。 「ただし、放出されたラナチウムは人体を構成する最小単位である素粒子の纏う電子とは反応し合います。作動させる際、間近に居た人間は恐らく・・・体の力が抜け、数分間動けなくなるでしょう。まぁ、身体への害は全くありません。御心配には及びませんよ。」 オオカワラ氏との対談が終わると、班長は今日の業務の終了を告げ、帰宅を促した。 「こりゃあ、やるしか無いな。半年後には俺達は人類の英雄よ!じいちゃんにもこの話、聞かせてやりたかったなぁ。」     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!