9/30
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
フランクは自分のデスクに戻ると、趣味で集めている旧世界の鳥のフィギュアを呆然といじり始めた。私は「フクロウ」とかいう絶滅した鳥の模型を眺めながら、つい先刻のナオキ=マツシタ議長の演説を反芻した。 「我々が今抱えている問題、食料不足、土地問題、資源不足、人口超過。これらは全て、人類が広大な土地を失った事に起因します。歴代の議長の方々は、それを様々なカタチで解決しようとしてこられました。そのお陰で今の技術力があり、この50年間の平和があると言えるでしょう。ですが私は、ずっと疑問を抱いていました。肝心の土地を取り戻す作業はどうしたのか、と。 彼らはこう答えるでしょう、『例え人員を派遣したとしても、人間が住めるような環境には戻せない。当ての無い事業に時間とお金を割く事は出来ない。』と。ですが私は、その言葉に納得などしません。私の先祖は日本人でした。先祖達は昔、資源の乏しい狭い島国に在っても、その頭脳と技術力で道を切り開いてきました。私は日本という土地を失ったとしても、その心意気は決して失いはしません。私は人類がかつての大地を取り戻す為に、指導者の地位に就きました。皆さんの期待を裏切りはしません。今こそ、我々の故郷へ還ろうではありませんか!」     
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!