タマーラ

第1章～1人の看護婦～

その年の秋。あの女性はあれから無事、日本で看護婦として働くことが許された。

当時、日本は大正時代だ。

女性の名前はメジェリ・マリシュカという。彼女は日本の東京府の病院で看護婦として働き、病院の寮で暮らしていた。

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「お大事にしてください。」

今日も診察と治療の終わった患者を見送るときにそんなセリフを口にする。

「田中さん、次の患者の方は…ーー」

「ああ、さっき緊急でこっちに手術を受けにくる大学予科の2年生の男の子で…学校でトラブルがあって大怪我をしたらしいんだ。」

田中ーー田中 雅彦(たなか まさひこ)は、この病院の医師だ。マリシュカがこの病院に就職する前からここで働いているので、彼女にとっては先輩だ。

また、マリシュカは以前に日本でこうして働き始める前に日本に留学したことがあったため、日本語はペラペラではないものの、上手に話せている。

話を戻すが、その緊急で治療を受けに来る大学予科の2年生の少年の話を聞いたマリシュカは、とりあえずかなり酷い状況で心も身体も傷だらけな者が来ることを察した。

学校でのトラブルの怪我の原因として考えられるのは、いじめの被害、喧嘩、自殺未遂あたりだ。

とりあえず、マリシュカは３つ目のことが原因ではないことを祈るしかなかった。

だが、病院は怪我をしたり病を抱えた患者たちが治療や診察を求めて訪れる場所なので、そのような人間と遭遇するのは日常茶飯事なわけなのだが…。