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孫からの贈り物
ボンヤリと庭を眺めていると、雪がちらつき始めていた。外は、もう大分冷え込みが厳しくなって来たようである。
暖房の効いた部屋の中で、火燵に入っていると、窓一枚隔てた、向こう側の寒さを、まるきり想像することができない。
今も、すっかり外の寒さを忘れてしまっていた。それを、雪がちらつき始めたのを見て、ふと思い出した。
外の寒さを想像して、火燵に深く入り直した。部屋の中には、妻が昼食の洗い物をする水音だけが響いている。
「婆さんや、お茶を入れてくれんかい」
火燵の中から、台所で洗い物をしている妻に呼びかけた。一拍おいて、はいはいという短い返答があった。そして、洗い物の水の音が止まった。
「また、アレをお使いになるんですか」
妻が流しから顔を出し、聞いた。
「そうしてくれ」
儂は頷きながら、そう答えた。
アレとは、孫娘がプレゼントしてくれた、少し変わった形の湯呑みのことである。孫と一緒に私に来た娘が言うには、最近発売された商品らしい。渡すときに、商品名やら、ブランド名やらを言っていたのだが、馴染みのない難しい名前で、イマイチ覚えることができなかった。
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