第1章プロローグ

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当然壮年者しかおらず戦えない住民を抱える村長は山賊からの暴力沙汰を避ける為、村のために断れるはずもなく要求を呑んだため住民の生活は困窮していた。 しかしそれだけでは終わらない。 一行が到着する三日前…この村にいる唯一の若い村娘が一人行方不明になっていたのだ。 その若い村娘は気立ての良い常識のある娘で、両親に何も言わず家に帰らなかった事などただの一度としてなかった。 証拠となるものは何もない…だが、山賊団の仕業であると考えるのは自然な思考であるだろう。 「酷い話っすね…」 「ですから旅人様は直ぐにでも出ていった方がよろしい…女性がこの村におるのは危険極まりない…」 「退治してあげるっすよ」 「……え?」 唐突にそんな事を言われたので話を呑み込めない村長。 「山賊達の退治。見過ごせないっすもん、せんぱいならそう言います」 「………ふっ、確かにな」 「お人好しでありますから」 「そうでございます…そうやってうちの事も助けてくれたのでございますから…」 全員がここにはいない誰かの事を想い、意見を通わす。 自分達は別に正義の味方ではない、金で動く傭兵や暗殺を生業とする少女…どちらかといえば心無い人間の集まり。 その心をいつの間にか動かしたのは…人の想いをいつも考えていたあの男。 それに身を委ね、心地よさを感じている内に随分と丸くなった…と一行は微笑った。     
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