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初めて耳にした声と共に、血飛沫を飛散させる大柄な首無し人間が後方にドスンという音をたて倒れる。
周りを取り囲む男達も何が起きたかは理解できていないようで、皆呆気に取られ、声のした…この空間の入口を見る。
「なっ……!?だっ…誰だてめぇ!」
間抜けで一辺倒な台詞が山賊の一人から発せられる。
娘の目から見ても全く謎めいた人物だった。
漆黒の髪を全て後ろに回し纏め、額と顔面を完全に露出させている。
その顔は多少中性的ではあるものの、その姿勢や雰囲気のせいで目尻は吊り上がり凶悪な気性を覗かせる。
一見すると山賊団の一味にも見えかねない。
しかし服装は独特で白い薄布一枚には見た事の無い文字で模様と共に何か描かれている、下はまた黒色の見た事もない穿き物で側面には赤色の血のような線が入っていた。
男は山賊の問いかけを無視し、独り言のように、それにしては大声で皆に告げた。
「よく考えたらよぉ、俺は悪人が嫌いなんだ。だってそーだろ?皆が行儀良くルールを守って生きてんのによ…悪人だけがルールに縛られねぇでいい思いをする…んなの納得できると思うか?」
「そんないい思いすんのは神である俺だけでいい」
「俺か?…俺は『身元不明』…いや『身元不名』か…まぁどっちでもいい」
「やがて神になる男…ナナシ改め…ジョンだ」
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