光色シンパシー

2/13
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
俺は髪を赤色に染めた。 それは高三になる直前の春休みだった。 ただぽっかりと、ある筈のものが無くなった感覚で、それを埋めるには色で満たすしか無かった。 大好きなおおいぬ座VY星と同じ色で。 「なー、恭介って星は見えるんだっけ?」 すっかり街路樹の葉も落ちた二月の夜。 同じ塾に通っていた恭介とは、いつもコンビニで夜食を買って、一緒に帰るのがルーティンだった。 「まあなー、何色かはわかんないけど。あ、信号」 「青。光は見えるんだったよな」 暗くなると、色の判断がさらにつきにくくなるらしく、こうして帰り道は信号の色を恭介に伝えるのもシンパシー同盟の役割だった。 「でもなんで?」 「いや、来年の二月さ、流星群がかなり出現するんだよ。だからセンター終わったら一緒に───」 「わるい、無理だわ」 ブレーキの耳障りな音が闇に響く。 でも夜空には、鮮やかな緋色が舞い上がっていた。 「俺、来月引っ越すんだわ」 「聞いてない……」 「言ってない」 凍えそうな寒さの中に溶け込む、恭介の緋色と、俺の深緑。そのどちらも、きっと恭介には同じ色に見える。それがたまらなく悔しかった。 だからずっと、俺の見える世界を見せ続けてやるんだって、勝手に思い込んでいた。 世界がこんなに鮮やかなのを、見せてくれてたのは恭介だったのにな。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!