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プロローグ③彼の事情
「違う路線と接続してる駅は他にもあるけど、北千住越えたら何処に向かうか分からないから、まず追ってはこれない。大声出したければ遊園地もあるし、海まで出ることも出来るよ。」
「一番遠いところに行ってみたいです。」
「じゃあ、海まで出てみよう。」
あがった息を整えながらも、少女の表情は先程までとは明らかに違っていた。
「私、こんなに走ったの、初めてです。」
少女は嬉々としていた。
「こんなにってたかが1キロ程度……もっと運動しろ。あんなボテボテじゃ追い付かれる。よく逃げ切れたな。」
「あの時は、窓から周辺道路が見えたので、信号が変わるタイミングをはかって……。」
「そんなことできんの!?」
ルカは再び時間を確認した。
「あんま時間ある訳じゃないから、その間に考えなくちゃいけないな。」
少女はルカの言葉に下を向いてしまい、二人はしばらく黙ってしまった。
午後5時
「降りるよ。」
日暮れも早まってきた夕刻、少し風も冷たく感じられた。ルカはLINEでミキに『北千住』と打って送信した。
「ダメだ、考え事してると頭痛くなってくんな。何か食う?」
ルカはそう言うと近くの売店に寄り、チョコレートとカロリーメイトとコーヒーを買って、少女に半分、分け与えた。
「私、頭悪くて……。」
「知ってる。」
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