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「夢かぁ……何だろ?通信は卒業しようと思ってるけど。この間、社員に推薦するって話があって、規定で高卒以上じゃないと社員になれないから、高校だけは卒業してくれって言われて……。
規定を変えるアクション起こすより、普通に卒業した方が早いって言われるとその通りなんだよね。出来がどうでも後は問われないなら、その方が楽だし。
そおねぇ……金があったら進学したい気もするけど、世話になってるところに就職するのも悪くないかなと思ってみたり。けど、つくばだからさ、周りでは色んな研究がされてて、先端の研究も見てみたい気がするし……ごめん、偉そうなこと言った割に俺も何も決まってねぇわ。」
「あなたは、私には出来ない全てを持っているみたい。」
「全部自分で決めたこと?楽じゃあないけどね。」
「何で10時だったんですか?」
「それは労基で決まってるから。子供が就労していい時間について定められていて、その時間帯は出歩いてる事があるってこと。中学生までは夜8時、高校生は夜10時って決まってる。それ以上遅くにうろついてたら補導されても文句言えないから、俺達も付き合えない。」
「日本はそんなところまで保証されているんですね。」
「ん?……まあ……だから、帰れる所があるんなら、一度、帰った方がいいんじゃないかな。」
帰らない方法も考えに考えたが、少女の様子を見ていて答えに迷い、ルカが切り出した。
「そうですね。」
少女は寂しげに微笑んだ。
「最後にお聞きしたいんですけど……。」
***
車が公園に到着すると、男はミキを置き去りにして車を降りた。車の前を横切った時に、男の腰にホルスターらしき物が見えた。ミキは先に二人を見つけて報せようとドアレバーを引くが、扉は開かなかった。
「チャイルドロック!畜生!」
男が離れて自動ロックが掛かってしまったが、ミキは構わず運転席側からドアを開け、盗難警報を鳴り響かせた。
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