プロローグ④彼女の事情

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 ルイスはルカから手を離し、少女の腕を掴んだ。少女が腕を引っ込めようとしたのを見て、ルカがルイスの手をはたき落とした。 「だから、何で無理矢理なんだよ!嫌がってるだろ!?折角帰るって言い始めたのに!これだから大人は嫌なんだよ!!」 「ルイス、待って!」  少女はルイスの両腕をおさえた。 「帰ります。少し時間をちょうだい……。」  少女は手を離し、ルカの手を取った。 「今日は、本当に有難うございました。本当に、本当に、有難うございました。」  礼を言うと、少女はルカの両頬にキスをした。 「俺もいいかな?」  ミキが右手を差し出すと、少女は両手で包み、頭を下げた。  窓越しに手を振る少女を見送ってから、ルカとミキはゆりかもめで帰る事にした。時刻は夜8時を回ろうとしていた。 ***  言い訳も何も口にしない少女にルイスは困惑していた。 「観光がしたいなら予め言って貰えれば考えます。万が一危険が及んだ場合は問答無用であなたを撃たなくてはならないんですよ?ご自分の立場を忘れた訳ではないでしょう?」 「……忘れた(・・・)。」 「!?」 「忘れたわ。」  車窓を眺める少女の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。 ***  ミキは直接土浦に帰ると言い、新橋でルカと別れた。ルカは何が起こったのか整理がつかないまま、ぼんやり電車に揺られていた。  ルカにミキからの着信があった。貼られていたURLを開くと、知能研究の論文やニュースだった。それらは良く解らなかったため読み飛ばしたが、最後の記事が目に止まった。  記事は最近話題の忘れられる権利に関連したものだった。そのプログラムは世界一長いスパゲッティプログラムで、その難解さからアリスプログラムと呼ばれ、その開発チームの写真には、彼女の姿は無かった。
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