プロローグ①少女を拾う

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 ルカは紙に自分達の名前を書いて、鳴神に「LUCA」神帰に「MIKI」と書き加えて見せた。拒絶されれば会話にならない。何処まで会話が成立するかを探っていた。 「ルカ、ミキ。」  と、少女が読んだ。ミキが調子に乗って言う。 「ジャパニーズ ラーン ファースト イングリッシュ ワード イズ This is a pen!」  少女はカレーが気管に入ったかのように激しくむせこみ、下を向いたまま体を小刻みに震わせた。 「ウケた。」 「やめて差し上げろ。食ってる最中に……。」  テレビのニュースが気になったのか、少女はテレビに目を向けた。ニュースは株価の話題だった。最近話題になっていたのは、忘れられる権利についてだった。  インターネット上に一度挙げられてしまったものは、すぐに拡散されたり、誰に保存されたかわからなかったりして、全て消し去ることが不可能と言われてきた。それを解消する技術を開発し、特徴が合致した画像や関連する情報を消去してくれるという。かなり精度が高いらしく、技術革新として、しばしば取り上げられていた。  ニュースは近いうちに日本でも上場されるようだという報道だったが、少女は眉間にシワを寄せるような表情でテレビを見ていた。     
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