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ルカの言葉に男性が眉をひそめた。
「では、君はどうやって彼女を守るつもりだ。渡った先に依っては大変な脅威になりうる。」
「確かに、僕には何の力もありません。でも、やり方が気に入らないんですよ。彼女が自立と教養から遠ざかっていたのも、身動き取れないようにするための、そちらの教育方針のせいじゃないですか?」
そうは言いながらも、それについてはルカ自身、どこかこのままの方が安全で、仕方のない事なのかも知れないとは思えていた。
「調べればわかる事だから言いますけど、僕、自分の母親に何で子供を連れて逃げなかったのか聞いたことがあるんです。そしたら、生活出来ないからって言われまして。元々は父親の暴力が原因だったんですけど、徐々にエスカレートしていくと慣れちゃって、感覚が麻痺してくるんですよね。
そういう時、判断できる大人が決断出来なかったらダメだと思うんですよ。学歴はともかく、相手がダメだと思ったら、離婚するなり別居するなり、お互い自立して生活していけるだけの教養は必要だと僕は思ってます。子供が犠牲になる世の中はもう嫌なんですよ。」
「あらら、結婚する前に離婚しちゃった。」
ルカが横目で振り返ると、ミキはガムを膨らませながら笑っていた。
「それも君の希望の押し付けにならないかな。」
「そうです。どこの誰になろうと、彼女が自分を取り戻す事が出来るなら、取り敢えずどうだっていいと思える位、今の僕は彼女に関して冷静な判断が出来ません。だから……冷静な第三者の判断に任せようと思ったんです。」
「?その第三者とは誰だね。」
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