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元々は暗号化やセキュリティの会社だったらしいが、保護目的の検索、消去がビジネスになってからは、急速に業績を伸ばしていた。その裏で、良からぬ噂もあった。どんなサーバにも自在に侵入できる可能性が否定出来なかったり、安易な消去による情報混乱が起きないかという懸念が払拭しきれていなかった。同社は、削除依頼を受ける管理会社にシステムそのものを提供する事で実現していると説明していた。
「昨日、いきなり呼び出し食らってさ、何かと思ったら国交省物件って間違いなくサンプリングした証拠に現場写真残さなくちゃいけないんだけど、初めて現場行った社員が物件名書いた看板に集まってにっこりピース写真撮ってきたらしくて。」
「修学旅行かよ。」
「採取したサンプル瓶が写ってたら、良くないにしてもギリ証拠になるけど、肝心のサンプルが写ってないんだと。別の日に撮り直すと不正だし、二度と国交省物件受注出来なくなるって笑うに笑えなくて、今からバイク便寄越すから、鳴神、お前が行ってくれ!って。」
「小春ちゃん?」
「小春。いやいや、何で知らないオッサンに抱きついて片道2時間もデートしなきゃなんないの?なんて事させんだ。」
「キッツ!行ったの?」
「行ったよ。日暮れまでに絶対間に合わせてやるから車貸せって小春の車奪取して。俺までにっこりピース撮ったら面白いだろうなと思って送ったら鬼電!」
「ブッハハハハッ!!送ったのかよ!」
「笑いすぎて2分でギブ。間違えましたってデジカメの写真送って、お前いい根性してるなって言われたから、お陰様でってしれっと言ってやったよ。」
少女がテレビに見入っている間、二人はいつものように雑談に興じていたが、次第に「今日、どうする?」という会話に戻ってきて、
「いつまでもここにいてもしょうがないしな。」
と、ルカが着替えを用意し始めた。
「着替えたら、少し外に出よう。」
少女は人目を気にする素振りもなく、渡された服に着替え始めた。少しぶかっとして見えるものの、それなりに着ることができた。ハーフパンツはウエストがゆるくベルトの穴が足りなかったので、ルカが身に付けていた無段階のベルトを外して渡し、交換した。
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