82人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
君と僕の間には③何も知らない彼のこと
階段を降りてきた所長代理が一階分析室から出てきたルカを見つけて呼びつけた。
「鳴神!ちょうど良かった!TPH明日までに証明書出せるなら3倍払うって今、ゼネコンから依頼があった!出来る?」
「何検体?」
「昨日届いた40検体のうち、10検体。」
「余裕。」
「ついでに岩槻までサンプル届けて欲しい。行けるか?」
「了解。」
「サンプルは午前中に届くから、受け取ったら出て。それまでに終わる?」
ルカは検体リストを受け取りながら、笑顔で応えた。
***
ミキがルカの職場に車で乗り付けると、外でサンプリング作業を終えて片付けをしていた従業員が気付いて声をかけてくれた。
「鳴神、さっき出たよ。」
「残念!昼くらい一緒に食えるかなーと思ったんですけど……あ、神無月代理居ます?」
「3階あがって。」
従業員に促され、ミキとアリスは3階へと向かった。
「こんにちはー。」
ミキが所長代理の姿を見て声を掛けた。
「おお!働く気になった?」
代理の言葉にミキが苦笑しながら答える。
「いや、それはまた今度考えさせて下さい。今日、見学出来ます?勝手に見てっていいですか?」
代理は珍しい連れを見て、満面の笑みで答えた。
「案内しよう。」
代理は二人を1階に通した。ガラス器具や理化学実験装置がところ狭しと並んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!