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「これがTPH。汚染された土壌なんかに含まれる鉱油類をFIDで検出してアマウントを出す。さっき、彼がかけていったサンプルが並んでる。
1検体1時間かかるから、10検体で10時間。実際には測定したサンプルの汚染が次のサンプルに影響していないか確認する為に、間にブランクを挟んだり安定性を入れるから、もっとかかる。ざっと、22時間てトコだろう。
これはこのまま無人運転で翌朝止まる算段だ。彼は有能だよ。時々、データ整理と称して、ここで寝てるけどね。」
代理が苦笑した。実験台の上には野帳、点検記録簿、ガイドライン等の書類の他に、技術士の参考書が並んでいた。代理の目線の先にルカが見える気がした。こんな風に見守っているんだと、代理の余裕を考えると、アリスには代理が羨ましく思えた。
「今日は岩槻に行かせた。朝早くから芦ノ湖まで運転させる事もある。かなりきつい仕事だから、家族が応援してくれると嬉しいんだけどね。」
所長代理がアリスの顔を見たが、アリスは何も言うことが出来なかった。
「明日早くなる分、今日は戻り次第、帰るように言うから。」
そう言うと、所長代理は手を振りながら、3階へと戻っていった。
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