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学校へ帰る道のり、ほんのわずかな距離だけど、彼女と立木先輩が並んで歩いていて、私はその3歩後ろを歩いている。
二人がどんなことを話しているのかまで、ちゃんと聞き取りにくいから分からないけど、先輩って、こんなに楽しそうにおしゃべり出来る人だったんだな、知らなかった。
校庭に戻ると、グランドではサッカー部が練習を続けていた。
「あ、隼人だ、おーい!」
菊池さんが大きく手を振った。それに気づいた市ノ瀬くんが駆け寄ってくる。
「なんだよ、梨愛も掃除当番かよ」
彼はケタケタと笑った。
「なによ、隼人も真面目に総務の仕事やんなさいよ、ねー、小山さん?」
突然振られた私は、返事に困ってそのまま固まった。
「真面目にやってんのかよ、梨愛がさぁ~、お前には言われたくねーし」
「私も隼人に言われたくないー」
私が掃除に行く前に、ここで市ノ瀬くんと話した時とテンションが全然違う。
別にいいけど、だけど、こんなに楽しそうに他の女の子とは話すくせに、私とは出来ないんだな、別にいいけど、気にしてないし。
「二人とも、仲いいんだね」
「幼なじみなんだよ、腐れ縁ってやつ」
「そうなのぉー、ずっとずっと腐れえんー」
あっそ、そうですか、それはよかったね。
「先に行くね」
一言だけ声をかけて歩き出したら、市ノ瀬くんとちょっとだけ目があった。
なによそれ、申し訳ないと思ってるなら、今度からちゃんと掃除にきてほしい。
「掃除ご苦労さま、お疲れ!」
頭の上から声がしたと思ったら、上川先輩の声だった。普段の制服姿じゃなくて、Tシャツ姿なのがヤケに新鮮に見える。
「あぁ、いえ……」
あんまりしゃべったことがないから、これで2回目だし、いくら市ノ瀬くんと同じ部活だからって、話しかけてくるのが突然過ぎるから、私には次のセリフが出てこない。
「あー、上川先輩、お疲れっす!」
菊池さんは、市ノ瀬くんにしたのと同じような気軽さで、上川先輩にも声をかける。
それで上川先輩と仲良しの立木先輩も会話の中に入っちゃうから、私はますます、どういう顔をしてここにいていいのかが分からない。
勝手に行っちゃっていいのかな、でもそれも感じ悪いし、かといって、このまま会話に入って、なんだコイツって思われるのもイヤだな。
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