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「市ノ瀬くんは、どの競技にでるの?」
奈月は聞いた。
「俺? 俺はなんだっていいけど、まぁ、人数少ないところに出ないといけないんだろうな」
「志保は?」
「短距離走はヤダ」
二人が笑った。
「お前、足遅かったっけ?」
「早そうに見える?」
「見えねーな」
「市ノ瀬くんはリレーに出たら? 選手決め、もめそうじゃない?」
私がそう言ったら、二人は顔を見合わせた。
「宮谷さんは、リレーでもいいの?」
彼がそう言ったら、奈月はちょっと恥ずかしそうにして、うつむいた。
「い、市ノ瀬くんが出るなら……、てゆーか、市ノ瀬くんは、それでもいいの?」
奈月が聞くと、彼はくしゃくしゃと頭を掻きむしった。
「しかたねーだろ、じゃあ俺はリレーってことか?」
「市ノ瀬くんが手を挙げたのに、私も手を挙げるよ」
奈月がぼそりとつぶやくと、彼はうれしそうに笑う。
「うわマジで? 助かるわー、超心強いし。まあその時の流れ見ながらってことで」
次のクラス会の日に、出場者を決めることになった。
市ノ瀬くんが立ち上がると、奈月は小さく手を振って見送る。
「奈月、本気でリレー走るの?」
「だって、まずそれを決めないと、他の競技も決まらないと思うし」
私が彼女をまじまじと見つめると、奈月はさらに小さな声で言った。
「だって、志保は絶対走らないでしょ、だったら私が走らないと、しょうがないじゃない」
その時の奈月は、自分では気づいてなかったのかもしれないけど、顔が真っ赤になっていた。
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