#4『役割分担』

3/4
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
「ち、ちがっ、そんなんじゃないから!」 「分かってるってぇ~」  奈月は笑ってるけど、私は笑えない。柴田さんも、やっぱり笑ってない。 「最初と最後は、お前らイヤなんだろ?」  市ノ瀬くんが改めて、作戦を立て始めた。  最初に奈月が全力で飛ばす、次に柴田さんが走って、3番手の市ノ瀬くんで遅れを取り戻し、4番目の私が順位をキープ、最後に津田くんが走って、最下位になるのは避ける作戦だ。 「まぁ、これなら何とかなるでしょ」 「ずいぶんと志の低い作戦だけど」 「え? もっと高い目標を持ちたいわけ?」 「ないないないない」 「4組のオール男子チームは、無視してOK!」  5人が顔を見合わせた。なんとなく全員で笑い出す。 「本気でバトン、借りてきて練習すればよかったな」  奈月が言ったら、津田くんが落ちていた小枝を拾った。 「これでとりあえずやってみっか」 「練習にならないし!」  柴田さんが言うと、市ノ瀬くんは完全にふざけた調子で、小声でささやいた。 「俺たちのこの作戦、他のクラスに絶対にバレないようにしような」 「秘策だからね」 「秘策だな」  奈月と市ノ瀬くんの意気込みが凄くて、他の3人はまた笑った。 「あぁ、私、そろそろ部活行かないと」  奈月が立ち上がる。 「今年、バレー部は体育祭なにやるの?」 「バレー部は、毎年ライン引きだって」  奈月は笑顔で手を振ると、体育館へ向かって走っていった。 「俺もグラウンド行かないと」 「サッカー部は?」 「ハンド部と一緒に用具係」  私は津田くんを見上げる。 「バスケ部はね、周辺警備」 「あ、あいつ、タオルと飲み物、忘れてってるぞ」  市ノ瀬くんのすぐ隣には、奈月の白いタオルと、スポーツドリンクのペットボトルが、そのまま置かれていた。 「しゃーねーな、持って行ってやるか」 「俺、体育館行くから、ついでに持っていこうか」  津田くんがそう言ったのを、何となく私が先に手に取った。 「いいよ、私が届ける」 「じゃあ、途中まで一緒に行こうか」 「うん」  私が立ち上がるのを、彼は待ってくれている。 差し出されたその手には、何を乗せればいいんだろう、まさか私の手じゃないよね、 奈月のタオル? それとも、飲み物の方?
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!