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市ノ瀬くんが、突然立ち上がった。
「じゃ、またな」
彼はそのまま、一度も振り返ることなく、さっさと行ってしまう。
柴田さんも立ち上がった。
「私も部室によってから帰るから、一緒に行こ」
私たちは、体育館へ向かって並んで歩き出した。背の高い津田くんを真ん中にはさんで、3人で歩いていると、お父さんに群がる子供みたいな気分だ。
そんなこと言ったら、絶対怒るだろうけど。
「ねぇねぇ、いつからバスケやってるの?」
「うちの学校って、バスケ強かったっけ?」
私と柴田さんが順番に繰り出す他愛のない質問に、彼は笑って全部答えてくれた。
初めて同じクラスになった男の子だったけど、あの市ノ瀬くんなんかに比べると、ずっと話しやすい。
体育館に着いたら、彼はすぐにバスケ部に合流していった。
私はバスケ部の隣で練習の準備を始めていた奈月に、タオルと飲み物を渡す。
「あぁ、志保が持ってきてくれたんだ、ありがと」
奈月はそれを受け取ると、すぐに練習へと戻った。
帰ろうとした私を、柴田さんが呼び止める。
「ねぇ、ちょっとだけ、津田くんの練習見ていかない?」
彼女はなんだかんだで、そのまま津田くんの話しをつづけている。彼の姿をずっと、視線で追いかけていた。
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