#5『助け船?』

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 昼休みになって、相変わらずぶっきらぼうな市ノ瀬くんが、珍しく自分の方から私と奈月のところにやってきた。 「今日、俺さ、公園の掃除当番なんだけど、初めてでよく分かんないんだよね、どうすればいいの?」  どうすればいいもなにも、ただほうきを持って、そこに行けばいいだけなのに。 「やったことない人って、そんなことも分かんないんだ」  私の言葉に、彼はムッとなった。 「だから聞きにきたんだろ」  一緒に委員会行こうとか、私から誘った時には断るくせに、自分が都合悪くなると、こうやって頼ってくるんだ。 「行けばいいんじゃない? そのまま公園に」 「手ぶらで?」  掃除にいくのに、どうしてそういう発想になるのだろう、本当に彼は、掃除に行こうという気があるんだろうか。 「志保は、いつもここの教室からほうきを持って、行ってるよね」  奈月は彼に助け船を出す。 「ほら、後ろのロッカーのやつ」  彼女は教室の後ろを指差した。そんなとこ、わざわざ見なくなって全員知ってる。 だけど、何となく私も市ノ瀬くんも、後ろを振り返った。 「ほうきを持って行けばいいの?」  彼の発する言葉に、私はいちいち怒りしか感じない。  そんなことも知らなかったの? どれだけ関心がないんだろう。 「それで、いいんだよね、志保?」  返事の代わりに、彼を見上げる。彼は、もの凄くモジモジしていた。 「あ、あのさぁ、掃除、代わってとは言わないけど、出来ればひとりってイヤだから、一緒に来てほしいなーなんて」 「私には、いつもひとりで行かせてるくせに?」 「だから、悪かったって、もうしないから」 「ひとりじゃないよ、一緒に当番入ってる人がいるじゃない」 「知らない奴だし……」  だからって、私がつき合わないとイケナイ理由もないんだけど。 困り切った彼を見上げて、ふと思う。もし私が同じ理由で彼を誘ったら、市ノ瀬くんは私につき合って、一緒に来てくれるんだろうか。
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