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昼休みになって、相変わらずぶっきらぼうな市ノ瀬くんが、珍しく自分の方から私と奈月のところにやってきた。
「今日、俺さ、公園の掃除当番なんだけど、初めてでよく分かんないんだよね、どうすればいいの?」
どうすればいいもなにも、ただほうきを持って、そこに行けばいいだけなのに。
「やったことない人って、そんなことも分かんないんだ」
私の言葉に、彼はムッとなった。
「だから聞きにきたんだろ」
一緒に委員会行こうとか、私から誘った時には断るくせに、自分が都合悪くなると、こうやって頼ってくるんだ。
「行けばいいんじゃない? そのまま公園に」
「手ぶらで?」
掃除にいくのに、どうしてそういう発想になるのだろう、本当に彼は、掃除に行こうという気があるんだろうか。
「志保は、いつもここの教室からほうきを持って、行ってるよね」
奈月は彼に助け船を出す。
「ほら、後ろのロッカーのやつ」
彼女は教室の後ろを指差した。そんなとこ、わざわざ見なくなって全員知ってる。
だけど、何となく私も市ノ瀬くんも、後ろを振り返った。
「ほうきを持って行けばいいの?」
彼の発する言葉に、私はいちいち怒りしか感じない。
そんなことも知らなかったの? どれだけ関心がないんだろう。
「それで、いいんだよね、志保?」
返事の代わりに、彼を見上げる。彼は、もの凄くモジモジしていた。
「あ、あのさぁ、掃除、代わってとは言わないけど、出来ればひとりってイヤだから、一緒に来てほしいなーなんて」
「私には、いつもひとりで行かせてるくせに?」
「だから、悪かったって、もうしないから」
「ひとりじゃないよ、一緒に当番入ってる人がいるじゃない」
「知らない奴だし……」
だからって、私がつき合わないとイケナイ理由もないんだけど。
困り切った彼を見上げて、ふと思う。もし私が同じ理由で彼を誘ったら、市ノ瀬くんは私につき合って、一緒に来てくれるんだろうか。
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